「仮想通貨リテラシー強化シリーズ」と題し、読者の方の仮想通貨リテラシーを向上していく記事を公開しています。
第3回では仮想通貨を送金する際の注意点について6つに絞って解説していきます。
仮想通貨の送金は銀行振り込みと同じようなものですが、送金先を間違えると送金した仮想通貨が消滅する場合もあります。
大切なお金が消えないためにも、今回紹介する6つの点に十分注意するようにしてください。
仮想通貨の送金時に気をつけるべき6つのポイント
では仮想通貨の送金時に気をつけるべきポイントを6つ見ていきましょう。
今回解説するのはこの6つです。
- 送金する通貨の選択
- 送金先の対応チェーン
- 送金先アドレスの間違い
- (一部通貨のみ)メモ欄の記入
- アドレスポイズニングに注意
- トラベルルール対応ソリューションの違い
1. 送金する通貨の選択
1つ目は送金する通貨の選択です。
仮想通貨を送金する目的にもよりますが、特に国内取引所と海外取引所との間での換金目的での送金時にはこの点に要注意です。
仮想通貨はビットコインを始め、数千もの種類があります。
これらの仮想通貨は基本的にどれでも送金できるのですが、送金時の手数料は各通貨によって異なります。
例えば大手国内取引所のbitbankは送金手数料が以下のように異なります。
送金手数料 | 円換算 (記事執筆時点) | |
BTC (ビットコイン) | 0.0006 BTC | 約5,483円 |
LTC (ライトコイン) | 0.0015 LTC | 約18円 |
XRP (リップル) | 0.1 XRP | 約8円 |
この3銘柄を比較した場合、ビットコインで送金すると非常に多くの手数料を取られることがわかります。
一方でリップルはたったの約8円で送金できます。
また、チェーンによる手数料の違いにも注意が必要です。
例えばbitbankのイーサリアム(ETH)の送金手数料は以下のように異なっています。
ネットワーク (チェーン) | 送金手数料 | 円換算 (記事執筆時点) |
Ethereum | 0.005 ETH | 約2,303円 |
Arbitrum | 0.00042 ETH | 約193円 |
OP Mainnet | 0.00042 ETH | 約193円 |
同じイーサリアムを送金する場合でも、どのチェーンを選択するのかによって10倍以上異なります。
ただし、送金先のウォレットや取引所が対応しているチェーンで送金しないと送金したお金が消滅するため、注意が必要です。
この点は次の項目で解説します。
ちなみに送金手数料は取引所によって異なります。
また、取引所の中には送金手数料が無料というところもあります。
例えばGMOコインやSBI VCトレード、ビットポイントです。
これらの取引所の場合はどの通貨で送金しても手数料が無料です。
ただし、通貨(チェーン)によって送金速度が異なるので、送金速度を重視する場合は送金する通貨を選ぶ必要があります。
この点も次の項目で解説します。
では換金目的など、通貨を長期間保有するためではなく、国内取引所と海外取引所との間でお金を送金したいだけであればどの通貨がおすすめなのでしょうか。
筆者が個人的におすすめなのはリップル(XRP)やステラルーメン(XLM)です。
これらの通貨はbitbankの場合、送金手数料がそれぞれ0.1XRP(≒8円)、0.01XLM(≒0.17円)と非常に低コストで送金できます。
他の取引所でも手数料はほぼ同等です。
また、次の項目で解説しますが、送金速度も非常に速いのが特徴です。
このような点から送金時にはリップルやステラルーメンを用いるのがおすすめです。
ただし、送金先のウォレットや取引所が対応していなければ送金することができないため、注意が必要です。
2. 送金先の対応チェーン
2つ目は送金先の対応チェーンです。
チェーンとは現実世界で言うと「配送業者」のようなものです。
例えば先程の例でイーサリアム(ETH)を送金する際にEthereumチェーン、Arbitrumチェーン、OP Mainnetチェーンという3つのチェーンが出てきました。
ネットワーク (チェーン) | 送金手数料 | 円換算 (記事執筆時点) |
Ethereum | 0.005 ETH | 約2,303円 |
Arbitrum | 0.00042 ETH | 約193円 |
OP Mainnet | 0.00042 ETH | 約193円 |
この場合はそれぞれ3つの配送業者があると考えるとわかりやすいです。
現実世界では荷物を送る際に特に国内であれば送り先に関係なく、どの配送業者を使っても大差はありません。
しかし、仮想通貨の世界では使うチェーン(配送業者)によって大きく異なります。
1つ目の違いが送金先の対応チェーンです。
先ほどのbitbankの例ではイーサリアム(ETH)を送金する場合は3つのチェーンから選択できると説明しました。
しかし、送金先の取引所やウォレットがそれぞれのチェーンに対応していなければ送金先では受け取ることができません。
例えばbitbankからある取引所AへArbitrumチェーンで送金しようとしても、取引所AがArbitrumチェーンに対応していなければ取引所Aには反映されません。
この場合も送金した通貨が消滅してしまうことがあります。
そして2つ目の違いが送金速度です。
現実世界の配送業者でも配送業者によって配達速度が異なります。
最近では大差はありませんが、とはいえ荷物を同じ場所に送る場合でも発送した翌日に届く配送業者もあれば3日ほどかかる配送業者もいるでしょう。
チェーンも同じです。
使用するチェーンによって送金速度が異なります。
例えばビットコイン(BTC)を送金する際に使われるビットコインチェーンは10分~30分ほどかかる一方で、リップル(XRP)を送金する際に使われるXRPチェーンは数秒で完了します。
先ほども少し出てきたステラルーメン(XLM)はステラネットワークというチェーンですが、こちらも数秒で送金が完了します。
このように、使用するチェーン(この場合は通貨)によって送金速度が異なるため、速く送金したい場合は高速なチェーンを選択する必要があります。
ただし、通貨によって送金時に使えるチェーンが異なります。
例えばビットコインは基本的にはビットコインチェーンでしか送金することができません。
そのため、ビットコインをリップルチェーンで送金することはできません。
(この点は通貨とチェーンの関係が理解できていないとわかりにくいため、初心者の場合は取引所の手数料一覧を確認して単純に手数料が安い通貨で送金すればOKです)
ではどのチェーンがおすすめかというと先ほども書いたようにリップルチェーンを使えるリップル(XRP)やステラネットワークを使用するステラルーメン(XLM)です。
これらの通貨は送金手数料が非常に安く、送金にかかる時間も速いため、送金に適している通貨といえます。
3. 送金先アドレスの間違い
3つ目は送金先アドレスの間違いです。
仮想通貨を送金する際には「アドレス」というものを用います。
これは現実世界で言うと銀行口座の口座番号のようなものです。
銀行振込をする際でもそうですが、口座番号を間違えると振込することができなかったり、間違った人に振り込まれたりといった事態になります。
仮想通貨でも銀行口座でいう口座番号に当たる送金先のアドレスを間違えると当然ながら取引所やウォレットに送金することができません。
ただし、仮想通貨の場合は送金先のアドレス(口座番号)を間違えた場合、知らない人の取引所の口座やウォレットに送金されるだけではありません。
送金した通貨が消えることがあります。
銀行振込であれば存在しない口座番号へ振込した場合、そもそも振込できなかったり、組戻しといって自分の口座に振り込んだお金が返ってきたりといった対策が取られています。
しかし、仮想通貨の場合は存在しないアドレスであっても送金の処理はできてしまいますし、状況によってはそのまま消滅することもあります。
ただし、取引所によっては存在しないアドレスに送金した場合、問い合わせれば戻してもらえることもあります。
間違えないことが大事ではありますが、万が一間違えた場合は問い合わせを行ってみましょう。
では送金先を間違えないためにはどうすればいいのでしょうか。
対策法としては「アドレスを手打ちしないこと」や「テスト送金をする」ことが挙げられます。
1つ目がアドレスを手打ちしないことです。
仮想通貨のアドレスは非常に長い文字数となっているため、キーボードを使って1文字1文字手打ちする人は恐らくいないかと思います。
しかし、もし手打ちしようと思っている人がいれば必ずコピー&ペーストして入力するようにしましょう。
ちなみに過去に送金したアドレスに送金する際に履歴からアドレスをコピーして送金すると後ほど解説する「アドレスポイズニング」により、詐欺にあってしまうことがあります。
必ず取引所なら取引所を、ウォレットならウォレットを開いて直接コピーするようにしましょう。
2つ目はテスト送金です。
テスト送金とは自分が送金しようとしているアドレスに正しく送金できるかを確かめる作業です。
例えば1万円を送金したい場合、最初から間違ったアドレスに送金してしまうと1万円を失ってしまいます。
そこで本番の1万円を送金する前に10円など、少額を送金して取引所やウォレットに着金したことを確認した上で本番の1万円を送金するというようにします。
これにより、もしアドレスが間違っていても損するのは10円だけで済みます。
デメリットとしては以下の2点が挙げられます。
- アドレスが間違っていればテスト送金で送金したお金を失ってしまう可能性がある点
- 送金手数料が2重でかかってしまう点
しかし、今の例でいえば本番の1万円を損することは防げますし、先ほど紹介したリップル(XRP)やステラルーメン(XLM)であれば2回送金しても手数料は20円にもなりません。
また、後ほど説明するアドレスポイズニングという詐欺も防げます。
安全に送金するためにもテスト送金を行うことをおすすめします。
4. (一部通貨のみ)メモ欄の記入
4つ目はメモ欄の記入忘れです。
これはリップル(XRP)やステラルーメン(XLM)などの一部の通貨のみですが、メモ欄の記入を忘れることで送金が正しく行われないことがあります。
メモとは誰がその送金を行ったのかを表す識別子のことです。
送金アドレスと同じようなものであるという認識で大丈夫です。
ただし、メモ欄に記入するアドレスと送金アドレスは別物です。
メモを間違えた場合、取引所やウォレットに反映されないことがあるため、注意が必要です。
メモは送金先の取引所やウォレットのアドレスを確認する画面で同時に表示されます。
リップル(XRP)やステラルーメン(XLM)はどの取引所でも必ずといっていいほどメモ欄の記入が必要となるため、注意が必要です。
なお、送金時にメモ欄がない通貨についてはメモをは必要ありません。
5. アドレスポイズニングに注意
5つ目はアドレスポイズニングです。
これは詐欺の一種で、送金時に騙されることが多いため注意が必要です。
アドレスポイズニングの手法は以下のとおりです。
まず、攻撃者はターゲットとなるウォレットを探します。
次にこのウォレットのウォレットアドレスに似た偽のウォレットアドレスを作成し、少額をターゲットとなるウォレットに対して送金します。
これにより、ターゲットとなるウォレットに偽のウォレットアドレスからの送金履歴が記録されます。
ターゲットとなったウォレットを所有しているユーザーは、自身のウォレットに送金する際に偽のウォレットアドレスからの送金を自身のウォレットアドレスであると信じてしまいます。
そして偽のウォレットアドレスに送金してしまうことで送金した通貨がすべて攻撃者に取られてしまうというわけです。
例えば本物のアドレスがabcdefgだったとして、偽のアドレスをadcbefgのようにします。
上記の例ではbとdの位置が入れ替わっているのですが、パッと見て判断することは不可能です。
このように非常に似たアドレスにすることでターゲットを騙すというわけです。
これを防ぐための方法としては取引履歴からアドレスをコピーしないことやテスト送金することが挙げられます。
アドレスポイズニングは取引履歴に記載されたウォレットアドレスに送金することで発生します。
そのため、送金時には取引履歴から送金するのではなく、ウォレットのアドレスを直接確認する必要があります。
また、先ほど3の「送金先アドレスの間違い」の項目でも解説しましたが、本番の送金をする前にあらかじめ少額を送金することで、多額の仮想通貨をだまし取られる確率を下げることができます。
6. トラベルルール対応ソリューションの違い
6つ目はトラベルルール対応ソリューションの違いです。
トラベルルール対応ソリューションを説明する前にトラベルルールという規制について少し説明します。
トラベルルールは仮想通貨の不正な送金を防ぐための規制です。
仮想通貨は匿名性が高いことから、詐欺などで得たお金を送金する際にも使われることがあります。
このような悪質な送金を取り締まるためのルールがトラベルルールです。
そしてトラベルルール対応ソリューションとは仮想通貨取引業者がトラベルルールに対応するために利用するサービスです。
トラベルルール対応ソリューションには以下の3つがあり、国内の取引所が採用しているソリューションはそれぞれ以下のとおりです
- TRUST:bitFlyer、Coincheck
- GTR:バイナンスジャパン
- Sygna:それ以外(bitbank、GMOコイン、OKCoinJapanなど)
ここで問題になるのが、送金先と送金元で異なるソリューションを利用している場合です。
トラベルルール対応ソリューションは取引所間で利用しているサービスが異なる場合、送金することができません。
例えばTRUSTを採用しているbitFlyerとCoincheck間では送金を行うことが可能です。
一方でTRUSTを採用しているbitFlyerからSygnaを採用しているbitbankへは送金することが不可能となっています。
その逆も同じです。
つまり、送金元と送金先でソリューションが異なる取引所の場合、送金することができないというわけです。
対処法としてはMetamaskやTrustwalletといったウォレットを間に挟む方法があります。
例えば取引所Aから取引所Bに送金したいが、それぞれで異なるトラベルルール対応ソリューションを採用していたとします。
その場合、取引所A→ウォレット(Metamaskなど)→取引所Bのようにすることで異なるソリューション間でも送金が可能です。
まとめ - 送金は計画的に
今回は「仮想通貨リテラシー強化シリーズ」Part3として仮想通貨送金時の注意点について6つのポイントを解説しました。
- 送金する通貨の選択
- 送金先の対応チェーン
- 送金先アドレスの間違い
- (一部通貨のみ)メモ欄の記入
- アドレスポイズニングに注意
- トラベルルール対応ソリューションの違い
ある程度仮想通貨に慣れてくると送金する機会も増えてくるかと思います。
一方で慣れてきたときこそミスにより大金を失ってしまうことがあります。
送金時には気をつけるべき点は毎回確認するなどしてミスにならないように注意しましょう。